フィリピンの人口はなぜ増え続ける?人口増加・人口ピラミッド・今後の予測を解説

人口減少が進む日本とは対照的に、フィリピンでは現在も人口が増え続けています。
この記事では、フィリピンの人口推移や今後の人口予測、年齢構成などのデータをもとに、フィリピンの人口増加について解説します。
また、人口増加が経済成長を支える一方で、学校不足や都市の過密化などの問題も起きています。人口増加がフィリピンにもたらす利点と問題点についても紹介します。
フィリピンの人口は1億1,000万人を突破。今後も人口増加が続く
フィリピンの人口は2024年7月時点で約1億1,273万人です。人口減少が続く日本とは対照的に、フィリピンでは現在も人口が増え続けています。
2000年のフィリピンの人口は約7,650万人でした。それから約24年間で3,600万人以上増加したことになります。
3,600万人というと、現在のオーストラリアとニュージーランドの人口を合わせた数を上回ります。それだけの人口が約24年間で増えたと考えると、フィリピンの人口増加の規模が分かります。
一方で、フィリピンの人口増加には大きな変化も起きています。
以前と比べると人口増加のペースは鈍化しています。
この記事を最初に公開した2022年には、フィリピンの人口増加率を年間1.69%と紹介していました。
実際、2015年から2020年までの人口増加率は年平均1.63%でした。しかし、2020年から2024年までの人口増加率は年平均0.80%まで低下しています。
それでもフィリピンでは若い世代が非常に多いため、人口そのものは今後もしばらく増加すると予測されています。
フィリピン統計庁(PSA)の人口予測では、出生率が現在に近い水準で推移するシナリオの場合、2055年には人口が約1億3,867万人に達すると予測されています。
つまり現在のフィリピンを理解するうえでは、単純に「出生率が高く、人口が爆発的に増えている国」と考えるだけでは十分ではありません。
出生率や人口増加率はすでに低下している一方、若い世代が多いため、今後も人口増加が続く。
これが現在のフィリピンの人口動態の大きな特徴です。
(映画)マザーランド 世界一いそがしい産科病院
フィリピンの人口増加を象徴する映画として「マザーランド 世界一いそがしい産科病院」という映画も公開されています。

フィリピンの人口ピラミッドは若者が多い。年齢中央値は27.7歳

フィリピンは日本と比べて、若い世代の人口が非常に多い国です。
2024年のフィリピン国勢調査によると、フィリピン人の年齢中央値は27.7歳です。
年齢中央値とは、人口を年齢順に並べたときにちょうど真ん中に位置する人の年齢です。つまり、フィリピンでは人口の半分が27.7歳より若いということになります。
ただし、フィリピンでも少しずつ人口構成が変化しています。
年齢中央値は2015年の24.3歳から、2020年には25.3歳、2024年には27.7歳まで上昇しました。
2024年の人口を年齢別に見ると、0~14歳が約3,000万人で人口全体の26.7%、15~64歳の生産年齢人口が約7,495万人で66.7%、65歳以上が約740万人で6.6%となっています。
つまり、現在のフィリピンでは人口の約3分の2を15~64歳の生産年齢人口が占めています。
一方、0~14歳が人口に占める割合は2020年の30.7%から2024年には26.7%へ低下しました。反対に65歳以上は5.4%から6.6%へ上昇しています。
そのため、フィリピンは現在も日本と比べれば非常に若い国ですが、「若者がどんどん増え続けている国」という状況からは少しずつ変化しています。
それでも若い世代や働く世代が多いことは、今後のフィリピン経済にとって大きな強みです。
一方で、多くの若者に十分な教育や雇用を提供できるかという課題もあります。
若い人口が支えるフィリピンの経済成長
若い世代や働く世代が多いことは、フィリピン経済にとって大きな強みです。
前述したように、2024年時点でフィリピンでは15~64歳の生産年齢人口が全人口の66.7%を占めています。
生産年齢人口が増え、働く人の割合が高くなることで経済成長が促されることを「人口ボーナス」と呼びます。
フィリピン経済は近年成長を続けており、実質GDP成長率は2024年に5.7%、2025年には4.4%となりました。
またフィリピン経済ではサービス業の割合が大きく、2026年第1四半期にはGDPの63.2%を占めています。
マニラやセブなどの大都市圏には巨大なショッピングモールがあり、レストランやショッピングを楽しむ多くの人で賑わっています。若い人口が多いことは、労働力だけでなく国内消費の大きさにもつながっています。

また、若い労働力と英語力を活かした産業も発達しています。
その代表が、コールセンターなどを含むBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業です。フィリピンは世界有数のBPO拠点となっており、多くのフィリピン人が英語を使って海外企業向けの仕事をしています。
フィリピン留学で比較的安い費用でマンツーマンの英語レッスンを受けられることにも、若く豊富な人材がいるというフィリピンの人口構成が関係しています。
一方で、若い人口が多ければ、それだけで経済が豊かになるわけではありません。
人口ボーナスを経済成長につなげるためには、多くの若者に十分な教育を提供し、さらに教育を受けた若者が働ける雇用を生み出す必要があります。
しかしフィリピンでは、急速な人口増加に学校などの社会インフラの整備が追いついていないという問題もあります。
フィリピンの人口増加問題。16万教室以上が不足
フィリピンの人口増加がもたらす問題の一つが、学校の教室不足です。
フィリピン教育省(DepEd)によると、2026年時点でフィリピンでは全国で約16万5,000教室が不足しています。
人口が増え、多くの子どもたちが学校に通う一方で、必要な数の校舎や教室を整備することが追いついていません。
私自身もセブ市の公立学校を訪問した際に、教室不足の現状を目にしました。
セブ市にあるプンタプリンセサ小学校では、多くの生徒が限られた校舎で学んでいました。
生徒数に対して教室が足りないため、同じ教室を時間帯を分けて利用する二部制が採用されていました。午前の授業が終了すると、午後から別の生徒たちが同じ校舎・教室を利用します。
このような二部制は、フィリピンで教室不足に対応するために以前から採用されてきた方法です。
そしてこれは過去だけの問題ではありません。
2026年になっても全国で16万教室以上が不足しており、フィリピン政府は新しい教室の建設だけでなく、地方自治体や民間企業との協力、既存施設の賃借などによって教室不足を解消しようとしています。
若い人口が多いことは、将来の労働力となりフィリピン経済の強みになります。その一方で、子どもたちに十分な教育環境を提供できなければ、人口の多さを経済成長につなげることはできません。
フィリピンが人口増加を経済成長につなげ、一人ひとりの生活を豊かにしていくためにも、教育環境の整備は重要な課題となっています。
人口増加と都市への集中。マニラでは過密化が大きな問題に

フィリピンでは人口増加とともに都市化も進み、特にマニラ首都圏などの大都市では人口の過密化が大きな問題となっています。
フィリピン全体の人口密度は、1990年には1平方キロメートルあたり約200人でしたが、2020年には約360人まで上昇しました。
特に人口が集中しているのがマニラ首都圏です。
マニラ首都圏には約1,350万人が暮らしており、面積は約620平方キロメートルしかありません。そのため人口密度は1平方キロメートルあたり2万人を超えます。
人口が集中するマニラでは、住宅不足や交通渋滞、公共交通機関の混雑などが大きな課題となっています。
マニラ首都圏では交通渋滞を緩和するため、「ナンバーコーディング」と呼ばれる交通規制も実施されています。
これは車のナンバープレートの末尾の数字によって、平日の特定の曜日・時間帯に道路を走行できなくする制度です。
フィリピンでは今後も人口そのものが増加すると予測されているため、住宅、道路、鉄道などの都市インフラをどこまで整備できるかが重要な課題となっています。
フィリピンの出生率は大きく低下。それでも人口増加は続く
ここまでフィリピンの人口増加について紹介してきましたが、フィリピンの出生率はすでに大きく低下しています。
フィリピンの合計特殊出生率は、2017年には女性1人あたり2.7人でしたが、2022年には1.9人まで低下しました。
これは、人口を長期的に維持するために必要とされる約2.1人を下回る水準です。
フィリピンでは2012年に「責任ある親とリプロダクティブ・ヘルス法(RH法)」が成立しました。これによって家族計画や避妊に関する情報・サービスへのアクセス改善などが進められてきました。
一方、国民の多くがカトリックを信仰するフィリピンでは、避妊や家族計画をめぐって政府とカトリック教会が対立してきた歴史もあります。
また、フィリピンでは伝統的に大家族が一般的でしたが、出生率の低下からも分かるように、家族のあり方も少しずつ変化しています。
それでは、出生率が人口維持に必要な水準を下回っているのに、なぜフィリピンの人口は今後も増え続けるのでしょうか。
その大きな理由が、フィリピンには現在、若い世代が非常に多いことです。
これから結婚・出産する年代に入る人の数そのものが多いため、一人の女性が産む子どもの数が減っても、国全体では出生数が一定規模を保ちます。このような人口構成によって人口増加がしばらく続く現象を「人口モメンタム」と呼びます。
つまり現在のフィリピンは、かつてのような高い出生率によって人口が急増している段階から、出生率は低下しているものの、若い人口が多いため人口増加が続く段階へと移りつつあります。
日本の隣国であるフィリピンは、人口減少と高齢化が進む日本とは大きく異なる人口構成を持っています。
若い人口は経済成長の大きな可能性となる一方で、教育、雇用、住宅、交通などを十分に整備できるかという課題もあります。
人口の多さそのものではなく、若い世代に十分な教育と雇用の機会を提供し、その人口をどのように国の成長につなげていくか。これが今後のフィリピンにとって重要な課題です。

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