英語絵本は大人の英語学習におすすめ!英検・TOEIC LR対策にも役立つ4つの理由

「TOEIC LR試験、英検、大学入試、IELTS試験やTOEFL iBT試験の勉強をしているのに、なかなか英語力が伸びない……。」

そんな悩みを抱えている方に、ぜひ一度試していただきたいのが英語絵本です。

「英語絵本」と聞くと、「子どものための教材」と思う方も多いかもしれません。

しかし、英語絵本には、大人の英語学習にも活用できる作品が数多くあります。

英語絵本は子ども向けなので比較的読みやすい一方、ネイティブが使う自然な英語表現や、参考書ではなかなか出会わない語彙も登場します。

また、参考書や試験問題とは違って物語そのものを楽しめるため、気に入った作品を何度も繰り返し読みやすいというメリットもあります。

私自身、これまで図書館で数多くの英語絵本を実際に読み、英語学習に使える作品を探してきました。

この記事では、実際に英語絵本を読んできた経験をもとに、なぜ大人の英語学習に英語絵本がおすすめなのか、どのように学習すればよいのか、そしてどの作品を選べばよいのかを詳しく紹介します。

目次

英語絵本は子どもだけのものではない

画像: 中国系アメリカ人の移民2世の子供たちが、親世代の苦労(中国・大躍進政策後の大飢饉)を知るWatercress

海外の絵本には、子ども向けとは思えないほど深いテーマを扱った作品が数多くあります。

  • 家族の歴史
  • 多文化・移民
  • 友情
  • 思いやり
  • 自然との触れ合い
  • 人生や生き方

などを描いた作品は、大人が読んでも十分に楽しめます。

文章量は少ないものの、一文一文が丁寧に練られており、英語教材ではなく「短い文学作品」です。

実際、私は「大人が読んでも面白い作品」「YouTubeに朗読動画がある作品」「図書館で借りられる作品」という条件で生成AIに相談しながら英語絵本を探し、Watercressを見つけました。

参考記事: 英語絵本の探し方についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

英語学習に英語絵本がおすすめな理由

参考画像: 横浜市の図書館にある評価が高い英語絵本

① 子ども向けなので英語が読みやすい

This time it is just me and my dad.
(訳)この時、釣り場にいるのは、僕とお父さんだけ

なんと言っても絵本は子どものためのものですから、分量が少なめで、文章が易しく、読みやすいです。

そして、多くの絵本は読み聞かせを想定して作られています。繰り返し同じような表現が登場し、韻を踏んでいる文章がある絵本は特に読みやすいです。

もちろん作品によって難易度は異なりますが、小説のように長い文章が続くことは少なく、一冊を最後まで読み切りやすいという特徴があります。日本人でも1冊10-20分で読めます。

難易度が低いものであれば、5分で読めます。Youtubeの短い動画を1本観るよりも早く読み終えることが出来ます。

だから「洋書は難しい」と感じている人でも、英語絵本なら無理なく1冊を最後まで読み切ることが出来ます。

② 物語が面白いから、何度も繰り返し読める

参考画像: 英語参考書にはない物語性のある絵。絵を見ているだけでも楽しい。

この絵はThank You, Omu!のクライマックスの場面

TOEIC LR試験や英検の英文は、受験者の英語力を測定するためのものなので実用的です。

これら英文は実用的な英文なので、読んでいて面白い英文ではないです。試験のための英文ですから。

一方、英語を母語とする子供たちが読んで面白いのが英語絵本です。特にいずれかの賞を受賞した作品や、日本の図書館に置かれている作品は、繰り返し繰り返し読みたいと思わせる質の高い作品ばかりです。

100回繰り返しても苦痛にならない

英語絵本での読書は、「英語を勉強する」ための退屈なものではなく、「物語を楽しむ」、つまり自然と質の高い英文に触れる時間になります。

そして、英語力を上げるには長時間英語に触れることが必須です。

そのため義務感で試験勉強のために英文を読んで聴いているだけの人よりも、「好きこそものの上手なれ」で英語絵本を読み続けている人の方が英語に触れている時間は長くなり、結果的に高い英語力を身につけることが出来ます。

参考画像: Somedayに書かれている感動的な英文の中に登場する第5文型SVOCの知覚表現 “watch them(雪の欠片) melt / on your baby skin”

学習している英単語・英語表現を英会話で実際に使えるようになるためには、100回以上繰り返し同じ英文に触れる必要が有ります。

これは私の持論なので、人によって回数は変わるかもしれませんが、とにかく何度も何度も繰り返す必要が有ります。

英語は2-3回読んで、聴いただけでは身につきません。10回でも全然回数が足りないです。

英会話や英作文で新たに学んだ英単語・英語表現を使用できるようになるには、数え切れないくらいに反復する必要が有ります。

だからこそ、私は英語教材を選ぶうえで、「面白さ」は非常に重要だと考えています。その点で英語絵本は非常に優れた教材と言えます。

英語絵本は、参考書にはない「物語の面白さ」があります。物語に引き込まれることで、自然と何度もページを開きたくなり、素敵な英文を暗唱するのも苦痛では有りません。むしろ楽しいです。

英会話の話題としてもそのまま使える

参考画像: 冬の詩的な文章が美しい OWL MOON

さらに英語絵本にはもう一つ大きなメリットがあります。それは英会話の話題としてそのまま使えることです。

TOEIC LR試験の参考書や英文法の問題集について、ネイティブスピーカーと感想を語り合う機会はまず有りません。

しかし、英語絵本は世界中で読まれている「本」です。

好きな作品について話したり、おすすめの一冊を紹介したり、物語の感想を伝え合ったりすることは、ごく自然な英会話のテーマになります。

実際に英会話で「最近読んだ本は何?」という話題になった際に、お気に入りの絵本をそのまま紹介出来ます。

つまり、英語絵本は「読むための教材」であると同時に、「話すための話題」にもなります。

③ YouTubeの朗読動画を使ってリスニング・音読もできる

英語絵本のもう一つの魅力は、多くの作品にYouTubeの朗読動画(Read Aloud)があることです。

ネイティブスピーカーが本文を感情豊かに朗読してくれるので、「発音」「アクセント」「英文の抑揚」を確認しながら学習できます。

参考動画: 著者本人が朗読してくれるHot Dog。イラストがとても美しい(Caldecott Medal受賞作)。

https://www.youtube.com/watch?v=eWreBSB9N_I

絵本を読むだけでなく朗読動画も活用することで、リーディングだけでなく、リスニングやスピーキングの学習にもつなげられます。

④ 図書館を利用すれば無料で始められる

参考画像: 横浜市立図書館にあった易しめの英語で書かれている絵本

英語絵本を使って学習を始めようと思っても、「英語絵本は値段が高い(高いものは1冊4,000円くらいしたりする)」「自分に合う本が分からない」という理由で、なかなか最初の一歩を踏み出せない方もいるでしょう。

そんな方におすすめなのが公共の図書館です。

私も最初は図書館を利用して英語絵本を読み始めました。例えば上記の写真のように横浜市立図書館には初級者向けの易しめの英語絵本の名作が多く有りました。

まずは図書館で実際に手に取ってみて、読めそうなものを借りて読んでみましょう。無料で気軽に始められるため、英語多読の第一歩としても最適です。

英語絵本を読むと、どんな英語力が身につく?

英語絵本は読みやすいだけでなく、ネイティブが使う自然な英語表現や、参考書ではなかなか出会わない語彙を学べる教材でもあります。

自分の英語力に合った作品を、意味を理解しながら繰り返し読むことで、語彙・表現・読解力など、英語力の土台を伸ばすことができます。

ここでは、英語絵本でどのような英語を学べるのか、3つの観点から紹介します。

1. ネイティブが使う自然な英語表現を学べる

英語絵本の大きな魅力は、「生きた英語」に触れられることです。

単語帳では単語を一つずつ覚えますが、実際の英語は場面の中で使われます。そのため、物語の中で表現を学ぶことで、意味だけでなく「どんな場面で使うのか」まで自然に身につきます。

例えば、私がおすすめしている Watercress には、次のような一文があります。

We are told / to untie our sneakers, peel off our socks, and roll up our jeans.

この一文だけでも

  • untie:靴ひもをほどく
  • peel off:靴下や服などをペリペリと脱ぐ
  • roll up:袖やズボンの裾をまくり上げる

これら日常生活でよく使われる動作表現をまとめて学ぶことができます。

イラストを見ながら読むため、単語帳よりも場面と結び付けて覚えやすいのも英語絵本ならではのメリットです。

さらに、 Watercress にはこんな文章も登場します。

The tops / of the cornstalks / make lines / that zigzag / across the horizon.

この英文からは以下の自然な英語表現を学ぶことができます。

  • zigzag(ジグザグに進む)という自動詞
  • make lines 線を作っている
  • across the horizon 地平線の向こうまで

日本では「zigzag」は名詞として認識されることが多いですが、英語では動詞としても自然に使われます。

このように、英語絵本では「単語を覚える」のではなく、「ネイティブが実際にどう使うのか」を学べることが大きな魅力です。

2. 高度な語彙・文学的表現に出会える

「英語絵本は簡単な英語ばかり」と思われがちですが、世界的な受賞作には大人でも学びの多い語彙や表現が数多く登場します。

例えば Watercress の一文です。

The paper is soaked and I’m half afraid, half hopeful that / the bottom will split, sending all the plants back down / into the muck.

この短い文章だけでも、

  • soaked:びしょ濡れになった
  • split:裂ける、破れる
  • muck:泥、ぬかるみ ※特に汚いもの

といった語彙を学ぶことができます。

また、この後にさらに「びしょ濡れ」を意味する英語が繰り返し登場する箇所が有ります。そこでは

  • soggy:水を吸ってふにゃふにゃになった
  • sopping:水が滴るほどずぶ濡れ
  • soaked:すっかり水を吸った状態
  • sodden:水を含んで重くなった、ふやけた(やや文学的)

というようなかなり難易度の高い表現も学べます。この箇所は言葉の韻を狙って、著者が意図的にSで始まる「ずぶ濡れ」を意味する言葉を使用した箇所でも有ります。

難易度が高く思えるかもしれませんが、Watercressは小学校の中学年~高学年を読者として想定しているので、日本人でも繰り返し読むことで、こういった表現も習得出来ます。

英語絵本は「やさしい英語」だけではなく、ネイティブが使う豊かな表現や文学的な語彙にも触れられる教材なのです。

3. 英検・TOEIC LR対策、そして英語力全体の底上げにつながる

参考画像: TOEIC-LR試験と相性が良く英文がとても美しいLast Stop on Market Street

Last Stop on Market Street』: 「児童文学としての優れた文章」と「絵本としての優れたイラストレーション」に贈られる賞をそれぞれ受賞。大人が読んでも面白い。

英語絵本は、英検やTOEIC LR試験対策に直結した受験参考書ではありません。そのため、最短距離で得点を上げる本ではないです。

しかし、英語力の「土台」を育てる教材としては非常に優れています。英語絵本を読むことで、英語を母語にする人たちが使用する自然な英単語・英語表現を学ぶことが出来ます。

Last Stop on Market Street / Matt de la Peña (著), Christian Robinson (イラスト)

おばあちゃんと孫のCJが平坦ではない日常生活の中で美しいものを見つけていくLast Stop on Market Streetでは以下の表現が記憶に残っています

“Sometimes when you’re surrounded by dirt, CJ, you’re a better witness for what’s beautiful.”
おばあちゃん「周りが汚れているからこそ、CJ、何が美しいかに、かえって気づくこともあるのよ」

ここで登場する a better witness 、「より良い目撃者」はとても美しい表現です。この表現を繰り返し読むことで頻出語の一つである”witness”についての意味を熟知できます。

こうした自然な英語表現に数多く繰り返し触れることで、英語の基礎力は確実に向上させられます。

英語の基礎体力が身につけば、結果として英検やTOEIC LR試験の読解問題やリスニング問題にも対応しやすくなります。

また、IELTS試験やTOEFL iBT試験で高得点を目指す場合、最終的には学術的な文章や講義など、試験に近い素材での学習が必要です。

一方で、英語絵本を継続的に読むことは、英文を読む習慣や語彙・表現の土台を作る補助教材として役立ちます。

英語絵本を使った具体的な勉強方法

ここまで英語絵本でどのような英語を学べるのかを紹介してきました。

英語絵本は、一度読んで終わりにするのではなく、気に入った作品を繰り返し読むことで、より効果的な教材として活用できます。

私がおすすめしているのは、「精読 → 定着学習 → 実践」の3ステップです。

1.【精読】英文を正確に理解する

まずは自分のペースで英文を読みます。

分からない英単語や英語表現を調べ、英文法や発音についても確認します。

絵本にはイラストがあるため、知らない単語や表現が出てきても、絵から意味を推測できます。

また、分からない英文があれば、ChatGPTなどの生成AIに質問するのもおすすめです。

2.【定着学習】朗読動画を繰り返し聴いて、音読する

英文の意味を理解したら、YouTubeの朗読動画を繰り返し視聴します。

ネイティブスピーカーの発音やイントネーションを確認しながら、英文を暗唱できるくらいまで聴き込みます。

回数の目安は数十回から100回以上です。

また、朗読動画を真似しながら、自分でも音読します。

3.【実践】英作文・英会話で実際に使う

最後は、絵本で学んだ英語を自分で使ってみます。

英会話レッスンの予習として、読んだ本についての英作文を作成します。

そしてレッスンでは、「どんな物語だったのか」「どの場面が印象に残ったのか」「自分はどう感じたのか」などを実際に英語で話してみます。

このように、精読 → 繰り返しリスニング・音読 → 英作文 → 英会話と学習を進めることで、一冊の英語絵本を使って、

  • 読むこと(リーディング)
  • 聴くこと(リスニング)
  • 書くこと(ライティング)
  • 話すこと(スピーキング)

の4技能を横断して学習できます。

英語絵本を使って、実際に英語を話せるようになりたい方へ

英語絵本は、ただ読むだけでなく、精読 → リスニング・音読 → 英作文 → 英会話まで取り組むことで、4技能を横断した英語学習に活用できます。

ただ、「英文の意味が正確に理解できない」「発音や音読のやり方が分からない」「覚えた表現を英会話でうまく使えない」という方もいると思います。

オンライン英語のハル英語4技能アカデミー(ハルヨン)では、英文法・英文読解・発音・英会話などを組み合わせて、英語4技能を体系的に学習します。

英語絵本を含め、自分の英語力に合った教材をどのように使って勉強すればよいのか分からない方は、学習相談も受け付けています。

ハルヨンについて詳しく見る

おすすめの英語絵本: 2010年以降に出版、現代的な絵本

ここまで英語絵本の魅力をご紹介してきましたが、「実際にどの作品から読み始めればいいの?」と思われる方もいるでしょう。

ここから私がお勧めする英語絵本を紹介していきます。

どれも大人が読んでも満足できるストーリーで、英語学習にも最適な作品です。また、YouTubeで朗読動画を見つけやすく、日本の図書館でも比較的所蔵されているため、初めて英語絵本を読む方にもおすすめできます。

評価に関する補足

ここで紹介している作品自体はどれも素晴らしいものです。そのため、今回評価しているのは「英語教材としての相性の良さ」です。

「TOEIC LR試験との相性」「英検との相性」、これらの評価は各試験の公式教材・出題傾向を統計的に分析したものではなく、筆者が実際に作品を読んだうえでの独自評価です。

Watercress (2021)

Watercress / Andrea Wang (著), Jason Chin (イラスト)

中国系移民の少女が、家族と一緒に道端に生えているクレソン(Watercress)を摘みに行くことから始まる物語です。

最初は、道端に車を停め、そこに自生しているクレソンを無料で摘む両親の姿を恥ずかしく感じていた主人公。

参考英文:無料でもらうものを恥ずかしく感じている主人公
Free is bad.

Free is hand-me-down clothes (お下がりの服、古着) and roadside trash-heap (ゴミの山) furniture and now, dinner from a ditch.

しかし、母親から中国で暮らしていた頃の話を聞き、家族が経験した貧困や飢餓について知ることで、自分の家族やルーツに対する見方が少しずつ変わっていきます。

移民の親を持つ子どもが感じる「周囲のアメリカ人と同じでありたい」という気持ちと、親世代が持つ故郷の記憶や価値観との間にある葛藤が、短い物語の中で丁寧に描かれています。

同じアジア圏の文化を背景に持つ日本人にとっても、共感できる部分がある物語です。特に海外移住や留学を経験した方、これから海外で生活したいと考えている方には、文化や価値観の違いについて考えるきっかけにもなると思います。

英文は全体として読みやすいですが、ときどき絵本とは思えないほど難しい語彙や文学的な表現も登場します。

例えば、クレソンを摘む場面では、untie our sneakers(スニーカーの紐をほどく)、peel off our socks(靴下を脱ぐ)、roll up our jeans(ジーンズの裾をまくる)など、日常生活で使える具体的な動作表現をまとめて学べます。

一方で、soakedsoggysoppingsodden のように、「びしょ濡れ」の状態を微妙なニュアンスの違いで表現する語彙も登場します。簡単な日常表現から難易度の高い語彙まで、一冊の中で幅広い英語に触れられる点が本書の大きな魅力です。

また、移民、家族の歴史、貧困、飢餓、異文化といった社会的なテーマを扱っているため、英検との相性は非常に良いです。特に英検2級〜準1級を目指している学習者が、試験問題とは違う形で社会問題に関する英語に触れる多読教材としておすすめできます。

現代のアメリカの日常生活が舞台になっているため、TOEIC LR試験につながる自然な生活表現も学べます。ただし、物語の中心は移民や家族の歴史であり、ビジネスや職場などの場面はほとんどないため、TOEIC LR試験との相性は3つ星としました。

何より、短い物語でありながら、読み返すたびに主人公や母親の気持ちについて考えさせられます。繰り返し読みたくなる物語性と、繰り返して覚えたい英語表現の両方を持っているという点で、今回紹介する作品の中でも特に英語教材としておすすめしたい一冊です。

評価: Watercress / Andrea Wang (著), Jason Chin (イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★☆
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★☆☆
  • 英検との相性: ★★★★★
  • 英語教材としての適正: ★★★★★

Last Stop on Market Street (2015)

Last Stop on Market Street / Matt de la Peña (著), Christian Robinson (イラスト)

物語は少年CJとおばあちゃんが日曜日の礼拝のあとに、いつものバスに乗って出かけるところから始まります。

道中、周りの環境や自分にないものばかりに目を向けて不満を漏らすCJに対し、おばあちゃんは日常の中に隠れた美しさや豊かさを優しく教え諭していきます。

文章がとても美しい物語で、物語展開も見事です。1冊だけお勧めを上げてと言われた場合には本書をお勧めします。

私にとって特に美しいと感じられた一文は以下のものでした。

“Sometimes when you’re surrounded / by dirt (汚れ、汚いもの) , CJ, you’re a better witness (〜をよりよく見つけられる人) / for what’s beautiful.”

文学的な表現がやや難開ですが、ネイティブの小学3-4年生向けなので慣れればすぐ読めるようになります。

試験には絶対登場しないAAVE、African American Vernacular English(いわゆる黒人英語)が登場するので、アメリカの現代英語を知りたい人にもお勧めです。読んでいて、New York Cityで話されていた日常的な英語を思い出しました。

“Nana, how come we don’t got a car?”

*how comeを使用する際には通常の疑問文とは異なる語順に注意。
*(have) got ≒ have 持っている

二重否定は試験ではまず登場しません。

“Miguel and Colby never have to go nowhere.”

文法的には二重否定(never と nowhere)になっており、標準英語では「never have to go anywhere」となりますが、ストリートや子供の日常会話で「どこにも行く必要なんてない」と強い不満を強調する際によく使われる口語表現です。

試験対策としては直接的ではないですが、本書はアメリカ社会や現代英語の多様性を知る教材として価値が有ります。

評価: Last Stop on Market Street / Matt de la Peña (著), Christian Robinson (イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★☆☆
  • TOEIC LR試験との相性: ★★☆☆☆
  • 英検との相性: ★★★★☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★★

A Different Pond (2017)

A Different Pond / Bao Phi (著), Thi Bui (イラスト)

ベトナム系移民の父と息子が、夜明け前に釣りへ出かける静かな物語です。

文章量は決して多くありませんが、その一文一文に家族愛や移民として生きる苦労、父親の思いが込められています。

英文は全体として平易で読みやすく、それでいて深いテーマを扱っているため、大人だからこそ心に響く作品です。英語絵本をこれから読み始める方の最初の1冊としてもおすすめできます。

Watercressと同じく移民をテーマにしているので、海外移住や留学を考えている方に刺さる内容です。

以下、移民として生きる大変さが伝わる英文を2つ紹介します。

移民1世である父親の訛りの強い英語を、学校の子どもが「濁った川」にたとえる場面です。

A kid / at my school / said (that) / my dad’s English sounds like a thick, dirty river /θɪk ˈdɜː.ti ˈrɪv.ər/ (濁って汚れた川、泥まみれの川) .

肉体労働でできた手のマメを意味する callouses という言葉は、本書を読んで初めて知りました。

“Everything / in America / costs a lot of money (たくさんのお金がかかる) ,” he explains. I feel callouses /ˈkæl.ə.sɪz/ (たこ、まめ) / on his hand / when he squeezes /ˈskwiː.zɪz/ (強く握る) mine.

また、途中の焚き火の場面はイラストが無ければ、極めて難易度が高い箇所でした。

I put some rocks / in a circle and set up the twigs (小枝を組んだ) . “Like a volcano /vɒlˈkeɪ.noʊ/ (火山) ,” Dad reminds me.

I set one end / of each twig down, the other up, leaning them in (それらを内側に立てかける) so they rest against (~に寄りかかる) each other and hold each other up (お互いを倒れないように保持する) .

この焚き火の組み方を英語でスラスラと説明するのはかなり難しいです。こうした「物の位置や動きを英語で説明する力」は、TOEIC Speaking試験にもつながります。

個人的には、この場面をイラストなしで英語で説明できるなら、かなり高いスピーキング力があると思います。

また、日常生活で使われる表現や、物の位置・動きを表す英語も多く、TOEIC LR試験や英検に必要な語彙・表現を学ぶ教材としても使いやすいです。

評価: A Different Pond / Bao Phi (著), Thi Bui (イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★★
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★★☆
  • 英検との相性: ★★★★☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★★

Thank You, Omu! (2018)

Thank You, Omu! / Oge Mora (著)

料理上手なおばあさん「Omu」が作ったシチューの香りに誘われ、近所の人たちが次々と訪ねてくる心温まる物語です。

「困ったときは助け合う」「分かち合うことの大切さ」というメッセージが込められており、読み終えたあとに温かい気持ちになれる作品です。

日常生活で使われる自然な英語も多く、初めて英語絵本を読む方にもおすすめできます。

これまでに紹介した3冊がわりと重い内容なので、Thank You, Omu!の軽妙な物語は比較すると気軽に読めます。

日常的な場面が舞台で様々な職業の人たちが次々と登場するので、TOEIC LR試験との相性が抜群に良いです。

ただ、物語展開が同じことの繰り返しで変化が乏しいので、その点から教材としての評価を4つ星にしています。

参考画像: 様々な職業の人たちがおばあちゃんのOmuの家を訪問します。

評価: Thank You, Omu! / Oge Mora (著)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★★
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★★★
  • 英検との相性: ★★★☆☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★☆

The Cat Man of Aleppo (2020)

The Cat Man of Aleppo / Irene Latham, Karim Shamsi-Basha (著), Yuko Shimizu (イラスト)

シリア内戦下のアレッポを舞台に、街に取り残された猫たちを救った実在の人物 Mohammad Alaa Aljaleel の活動を描いた物語です。

主人公のAlaaは救急車の運転手として負傷した人々を助ける一方、住民が避難した街に残された猫たちに餌を与えるようになります。やがてその活動に賛同する人々から支援が集まり、猫たちのための保護施設を作るまでになります。

参考画像: 猫がたくさん登場します。

戦争を扱っているため重い背景を持つ作品ですが、物語の中心にあるのは戦争の悲惨さそのものではなく、「困難な状況でも、自分にできることをする」「人や動物を思いやる」という前向きなメッセージです。

実話をもとにしているため、英語を学びながらシリア内戦や中東について知るきっかけにもなります。2021年には、アメリカの優れた絵本に贈られるコルデコット・オナー(Caldecott Honor)にも選ばれています。

英文は絵本としてはやや難しく、物語前半では戦争や救援活動に関する語彙も多く登場します。一方、物語後半には寄付やボランティア、海外からの支援についての表現も登場します。こうした語彙や表現はTOEIC LR試験でも役立つため、TOEIC学習者の多読教材としても使いやすいです。

参考英文:物語中盤、世界中から支援が集まり始める場面
Word spreads, and volunteers arrive. Donations pour in from many different countries. Everyone wants to help the cats of Aleppo.

また、英検では社会問題や国際問題を扱う長文が出題されます。本書には戦争や支援活動に関する語彙も多く登場するため、英検2級〜準1級を目指す学習者の多読教材としてもおすすめできます。

難点を挙げるとすると、戦争の描写が重苦しいため、気分が落ち込んでいる時には、物語の前半を読み進めるのが少ししんどく感じるかもしれません。この点から、英語教材としての適正を4つ星にしました。

評価: The Cat Man of Aleppo / Irene Latham, Karim Shamsi-Basha (著)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★☆
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★★☆
  • 英検との相性: ★★★★☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★☆

Nour’s Secret Library (2022)

Nour’s Secret Library

Nour’s Secret Library / Wafa’ Tarnowska (著), Vali Mintzi (イラスト)

シリア内戦下のダマスカスを舞台に、戦争によって日常生活を奪われた少女NourといとこのAmirたちが、本を集めて秘密の図書館を作っていく物語です。

本作のイラストは戦争を題材にしながらも子どもの目線で描かれているためか可愛らしく、物語の前半ではダマスカスの街並みも魅力的に描かれています。

参考英文:内戦前のダマスカスを「香り高い場所」と表現する場面
There was a girl named Nour who lived in the city of Damascus, which was described by those who loved it as the “fragrant place”

爆撃によって学校に通えなくなったNourたちは、地下室に避難して生活するようになります。そんな中、壊れた建物から本を集め始め、やがて地下に秘密の図書館を作ります。そこには子どもだけでなく大人たちも集まり、本を読んだり、学んだりするようになります。

戦争を扱った重い作品ですが、物語の中心にあるのは戦争の悲惨さだけではありません。「どのような状況でも学ぶことを諦めない」「本や物語には人々をつなぐ力がある」というメッセージが込められています。

実話や作者自身の経験をもとにした作品で、英語を学びながらシリア内戦や、戦争の中でも本を守ろうとした人々について知るきっかけにもなります。2022年には、独立系出版物を対象とするIndependent Publisher Book Awards(IPPY Awards)の Children’s Picture Books (All Ages) 部門でGold Medalを受賞しています。

英文は一般的な子ども向けの英語絵本と比べるとやや難しく、戦争や避難生活に関する語彙も登場します。一方で、学校に行く、本を読む、本を集める、友人や家族と話すといった身近な行動も多く描かれているため、イラストを手がかりに物語を読み進めることができます。

日常生活を描いた場面もありますが、戦争や避難生活が物語全体の背景となっているため、TOEIC LR試験との直接的な相性はそれほど高くありません。

一方、英検では教育、戦争、社会問題、国際問題などを扱う長文が出題されます。本書ではそうしたテーマに関連する英語を物語の中で学べるため、英検2級〜準1級を目指す学習者の多読教材としておすすめできます。

評価: Nour’s Secret Library / Wafa’ Tarnowska (著)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★☆
  • TOEIC LR試験との相性: ★★☆☆☆
  • 英検との相性: ★★★★☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★☆

Hot Dog (2022)

Hot Dog / Doug Salati (著・イラスト) (Winner of the 2023 Caldecott Medal)

ニューヨークの暑い夏の日を舞台に、飼い主と散歩をしていた一匹のダックスフンドが、都会の暑さや騒音、人混みにうんざりしてしまうところから始まる物語です。

暑い歩道、車のクラクション、工事の音、せわしなく行き交う人々。ついに我慢できなくなったHot Dogの様子に気づいた飼い主は、そのまま予定を変更して、Hot Dogを海へ連れて行きます。

都会を離れて海に到着すると、物語の雰囲気は一変します。Hot Dogは砂浜を走り回ったり、波と遊んだり、海辺の生き物を眺めたりしながら、のびのびとした時間を過ごします。

大きな事件が起こる作品ではありませんが、「疲れたときにはいつもの環境から離れて休むことも大切」というメッセージが伝わってきます。都会での息苦しさと海辺での解放感をイラストで対比している点も、この作品の大きな魅力です。

私自身、昔ニューヨークに住んでいたことがあるので、イラストを見ていると当時のことを思い出しました。特に夜の公園を描いたイラストが好きです。

2023年には、アメリカの優れた絵本に贈られるコルデコット・メダル(Caldecott Medal)を受賞しています。オナーではなく、その年のMedal受賞作品です。

英文は短く、イラストから状況を推測しやすいため、今回紹介する英語絵本の中でもかなり読みやすい作品です。

その一方で、英語学習の教材としてはあまりおすすめできません。まとまった英文が続くのではなく、以下のように短く断片的な英語表現が並んでいるためです。

City summer
steamy sidewalks(蒸気でむせ返るような歩道)
concrete crumbles(コンクリートが崩れる)
sirens screech /skriːtʃ/(サイレンなどがキーキーと耳障りな音を立てる)
so hot!

英文そのものの量もかなり少ないので、英語をたくさん読むための多読教材というより、短い英語表現をイラストと結びつけながら味わう作品として向いています。

英語教材としてはおすすめ度が低い一方、10分程度で読めるので、英語学習を意識せず、絵と英語表現を楽しむ一冊として気軽に手に取るのがおすすめです。

評価: Hot Dog / Doug Salati (著・イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★★
  • TOEIC LR試験との相性: ★☆☆☆☆
  • 英検との相性: ★☆☆☆☆
  • 英語教材としての適正: ★☆☆☆☆

おすすめの英語絵本: 定番の作品、昔からの名作、2010年以前に出版

Madeline(げんきなマドレーヌ) (1939)

Madeline / Ludwig Bemelmans (著, イラスト) 

パリの古い寄宿学校に暮らす、いちばん勇敢で元気な女の子「マドレーヌ」の日常と騒動を描いた、世界中で愛され続ける古典的名作です。

盲腸で入院することになったマドレーヌの「傷跡」を、みんなが羨ましがるコミカルな展開など、子どもらしい愛らしさとユーモアがたっぷり詰まっています。

全てのページが心地よい「韻(ライム)」を踏んだリズムのある英語で書かれており、声に出して読む楽しさを味わいたい方におすすめです。

12人の女の子たちの規則正しい集団生活や、パリの街並み、病院でのやり取りなどが舞台となるため、日常英会話の教材として、TOEIC LR試験の教材としても使えます。

教材として使用するには英文の量がやや物足りないです。本当は星4つの評価が妥当です。

でも、それを補って余りある以下の魅力的な朗読動画があるせいで、気がつけば何度も何度も聞いてしまいます。一番繰り返し聴いている朗読動画です。

シリーズで共通している始まりの文章。何度も聴いている内にすっかりと覚えました。

In an old house in Paris
that was covered with vines
lived twelve little girls in two straight lines.

評価: Madeline / Ludwig Bemelmans (著, イラスト) 

  • 英文の読みやすさ: ★★★★★
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★★☆
  • 英検との相性: ★★☆☆☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★★

Officer Buckle and Gloria(オフィサー・バックルとグロリア) (1995)

Officer Buckle and Gloria / Peggy Rathmann (著, イラスト)

安全規則を教えることが大好きな警察官「オフィサー・バックル」と、彼の相棒となった警察犬「グロリア」の活躍を描いた、ユーモアあふれる人気絵本。

安全についての講話をしても、なかなか子どもたちに聞いてもらえなかったバックル。しかし、グロリアが一緒に登場するようになると、子どもたちは大喜び。バックルが話している後ろで、グロリアが安全規則を実演するような動きをすることで、講演は大人気になっていきます。

「安全規則」という少し堅いテーマを、警察官と犬のコミカルな掛け合いに変えているのが本作の大きな魅力です。

学校、警察署、講演会などが舞台となるため、学校生活や日常生活に関連する英語表現にも触れられます。

安全に関する具体的な場面が多く、単純な単語の暗記ではなく、英文とイラストを結びつけながら意味を理解できる点も教材として優れています。

英文は比較的シンプルで、同じ表現が繰り返される場面も多いため、初級~初中級の英語学習者にもおすすめ。ただ、英文が易しすぎるので、その点が物足りなかったので、教材としての適正は4つ星評価。

評価: Officer Buckle and Gloria / Peggy Rathmann (著, イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★★
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★★★
  • 英検との相性: ★★☆☆☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★☆

英語絵本を使って英語を学びたい方へ

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まとめ: 楽しみながら自然と英語力を高められる英語絵本

私は仕事で高校・大学入試対策のための英文法参考書の英文、無味乾燥としたTOEIC LR試験対策な英文に長時間触れています。

これらの英文と比べると、英語絵本は読んでいて楽しく、適度な息抜きになります。

英語絵本は「英語を勉強する」という感覚よりも、「英語で読書を楽しむ」という感覚で楽しめます。

なんといってもイラストが綺麗な作品ばかりなので、英語絵本は見ているだけで楽しいです。

英語学習を”義務” “修行” “苦行”だと考える人にこそ英語絵本はお勧めです。

そして、英語絵本を楽しみながら英語に触れる時間を増やすことで、英語力の土台を少しずつ育てていくことができます。

英語絵本、子どもだけでなく、大人にもお勧めです。

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この記事を書いた人

Backwise共同代表(塾長)・学習カリキュラム担当。
「20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ」の著者。自らも英文法・発音のレッスンを日々提供しています。
フィリピン留学の世界に2012年から関わっています。

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