英語学習におすすめの英語絵本|新しい作品を中心にTOEIC・英検・大学入試・おうち英語に活用

TOP画像: 朗読動画が1,000万回近く再生されている “The Bad Seed”

英語の絵本は子ども向けだから簡単、と思われがちですが、実際にはそうではありません。

作品によっては英検2級以上の語彙が普通に登場しますし、大人が読んでも考えさせられるテーマを扱った作品もたくさんあります。

一方で、一般的な英語の原書と比べると文章量は少なく、絵が英文の理解を助けてくれます。そのため、「英語の原書を読んでみたいけれど、いきなり洋書を1冊読むのはきつい」という学習者には、英語絵本がちょうどいい橋渡しになります。

この記事では、英語学習に使いやすい英語絵本を、英文の難易度や文章量も確認しながら紹介します。

単に有名な絵本を並べるのではなく、TOEIC・英検・大学入試・おうち英語など、英語学習の教材として使えるかどうかという視点で選んでいます。

目次

英語学習におすすめの英語絵本

新しい英語絵本を中心に紹介

この記事では、2010年以降に出版された新しい英語絵本を中心に、大人の英語学習におすすめの作品を紹介します。また、出版から数十年が経過した古典的な名作の中からも、英語教材として優秀な作品を選んで紹介しています。

どれも大人が読んでも楽しめる物語で、英語学習の教材としても使いやすい作品です。また、YouTubeで朗読動画を見つけやすく、日本の図書館でも比較的所蔵されているため、初めて英語絵本を読む方にもおすすめできます。

英語絵本を使った具体的な勉強方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。

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評価に関する補足

ここで紹介している作品の評価は、絵本そのものの作品評価ではなく、英語学習教材としての相性を評価したものです。

「TOEIC L&R試験との相性」「英検との相性」「英語教材としての適正」は、筆者が実際にすべての作品を読んだうえで、登場する語彙・英文法・文章量・テーマなどから独自に評価しています。

2010年以降のおすすめ英語絵本

Watercress(2021年)|移民・家族・貧困を描いた英語絵本

Watercress / Andrea Wang (著), Jason Chin (イラスト)

中国系移民の少女が、家族と一緒に道端に生えているクレソン(Watercress)を摘みに行くことから始まる物語です。

最初は、道端に車を停め、そこに自生しているクレソンを無料で摘む両親の姿を恥ずかしく感じていた主人公。

参考英文:無料でもらうものを恥ずかしく感じている主人公
Free is bad.

Free is hand-me-down clothes (お下がりの服、古着) and roadside trash-heap (ゴミの山) furniture and now, dinner from a ditch.

しかし、母親から中国で暮らしていた頃の話を聞き、家族が経験した貧困や飢餓について知ることで、自分の家族やルーツに対する見方が少しずつ変わっていきます。

移民の親を持つ子どもが感じる「周囲のアメリカ人と同じでありたい」という気持ちと、親世代が持つ故郷の記憶や価値観との間にある葛藤が、短い物語の中で丁寧に描かれています。

同じアジア圏の文化を背景に持つ日本人にとっても、共感できる部分がある物語です。特に海外移住や留学を経験した方、これから海外で生活したいと考えている方には、文化や価値観の違いについて考えるきっかけにもなると思います。

英文は全体として読みやすいですが、ときどき絵本とは思えないほど難しい語彙や文学的な表現も登場します。

例えば、クレソンを摘む場面では、untie our sneakers(スニーカーの紐をほどく)、peel off our socks(靴下を脱ぐ)、roll up our jeans(ジーンズの裾をまくる)など、日常生活で使える具体的な動作表現をまとめて学べます。

一方で、soaked、soggy、sopping、sodden のように、「びしょ濡れ」の状態を微妙なニュアンスの違いで表現する語彙も登場します。簡単な日常表現から難易度の高い語彙まで、一冊の中で幅広い英語に触れられる点が本書の大きな魅力です。

また、移民、家族の歴史、貧困、飢餓、異文化といった社会的なテーマを扱っているため、英検との相性は非常に良いです。特に英検2級〜準1級を目指している学習者が、試験問題とは違う形で社会問題に関する英語に触れる多読教材としておすすめできます。

現代のアメリカの日常生活が舞台になっているため、TOEIC LR試験につながる自然な生活表現も学べます。ただし、物語の中心は移民や家族の歴史であり、ビジネスや職場などの場面はほとんどないため、TOEIC LR試験との相性は3つ星としました。

何より、短い物語でありながら、読み返すたびに主人公や母親の気持ちについて考えさせられます。繰り返し読みたくなる物語性と、繰り返して覚えたい英語表現の両方を持っているという点で、今回紹介する作品の中でも特に英語教材としておすすめしたい一冊です。

評価: Watercress / Andrea Wang (著), Jason Chin (イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★☆
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★☆☆
  • 英検との相性: ★★★★★
  • 英語教材としての適正: ★★★★★

Last Stop on Market Street (2015)

Last Stop on Market Street / Matt de la Peña (著), Christian Robinson (イラスト)

物語は少年CJとおばあちゃんが日曜日の礼拝のあとに、いつものバスに乗って出かけるところから始まります。

道中、周りの環境や自分にないものばかりに目を向けて不満を漏らすCJに対し、おばあちゃんは日常の中に隠れた美しさや豊かさを優しく教え諭していきます。

文章がとても美しい物語で、物語展開も見事です。1冊だけお勧めを上げてと言われた場合には本書をお勧めします。

私にとって特に美しいと感じられた一文は以下のものでした。

“Sometimes when you’re surrounded / by dirt (汚れ、汚いもの) , CJ, you’re a better witness (〜をよりよく見つけられる人) / for what’s beautiful.”

文学的な表現がやや難解ですが、ネイティブの小学3-4年生向けなので慣れればすぐ読めるようになります。

TOEICなどの資格試験ではまず出会わないAAVE、African American Vernacular English(いわゆる黒人英語)が登場するので、アメリカの現代英語を知りたい人にもお勧めです。読んでいて、New York Cityで話されていた日常的な英語を思い出しました。

“Nana, how come we don’t got a car?”

*how comeを使用する際には通常の疑問文とは異なる語順に注意。
*(have) got ≒ have 持っている

二重否定は試験ではまず登場しません。

“Miguel and Colby never have to go nowhere.”

文法的には二重否定(never と nowhere)になっており、標準英語では「never have to go anywhere」となりますが、ストリートや子供の日常会話で「どこにも行く必要なんてない」と強い不満を強調する際によく使われる口語表現です。

試験対策としては直接的ではないですが、本書はアメリカ社会や現代英語の多様性を知る教材として価値が有ります。

評価: Last Stop on Market Street / Matt de la Peña (著), Christian Robinson (イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★☆☆
  • TOEIC LR試験との相性: ★★☆☆☆
  • 英検との相性: ★★★★☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★★

A Different Pond (2017)

A Different Pond / Bao Phi (著), Thi Bui (イラスト)

ベトナム系移民の父と息子が、夜明け前に釣りへ出かける静かな物語です。

文章量は決して多くありませんが、その一文一文に家族愛や移民として生きる苦労、父親の思いが込められています。

英文は全体として平易で読みやすく、それでいて深いテーマを扱っているため、大人だからこそ心に響く作品です。英語絵本をこれから読み始める方の最初の1冊としてもおすすめできます。

Watercressと同じく移民をテーマにしているので、海外移住や留学を考えている方に刺さる内容です。

以下、移民として生きる大変さが伝わる英文を2つ紹介します。

移民1世である父親の訛りの強い英語を、学校の子どもが「濁った川」にたとえる場面です。

A kid / at my school / said (that) / my dad’s English sounds like a thick, dirty river /θɪk ˈdɜː.ti ˈrɪv.ər/ (濁って汚れた川、泥まみれの川) .

肉体労働でできた手のマメを意味する callouses という言葉は、本書を読んで初めて知りました。

“Everything / in America / costs a lot of money (たくさんのお金がかかる) ,” he explains. I feel callouses /ˈkæl.ə.sɪz/ (たこ、まめ) / on his hand / when he squeezes /ˈskwiː.zɪz/ (強く握る) mine.

また、途中の焚き火の場面はイラストが無ければ、極めて難易度が高い箇所でした。

I put some rocks / in a circle and set up the twigs (小枝を組んだ) . “Like a volcano /vɒlˈkeɪ.noʊ/ (火山) ,” Dad reminds me.

I set one end / of each twig down, the other up, leaning them in (それらを内側に立てかける) so they rest against (~に寄りかかる) each other and hold each other up (お互いを倒れないように保持する) .

この焚き火の組み方を英語でスラスラと説明するのはかなり難しいです。こうした「物の位置や動きを英語で説明する力」は、TOEIC Speaking試験にもつながります。

個人的には、この場面をイラストなしで英語で説明できるなら、かなり高いスピーキング力があると思います。

また、日常生活で使われる表現や、物の位置・動きを表す英語も多く、TOEIC LR試験や英検に必要な語彙・表現を学ぶ教材としても使いやすいです。

評価: A Different Pond / Bao Phi (著), Thi Bui (イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★★
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★★☆
  • 英検との相性: ★★★★☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★★

Thank You, Omu! (2018)

Thank You, Omu! / Oge Mora (著)

料理上手なおばあさん「Omu」が作ったシチューの香りに誘われ、近所の人たちが次々と訪ねてくる心温まる物語です。

「困ったときは助け合う」「分かち合うことの大切さ」というメッセージが込められており、読み終えたあとに温かい気持ちになれる作品です。

英語学習という点でも、意外と学べる表現が多いです。例えば、シチューを作る場面だけでも、season(味付けをする)、stir(かき混ぜる)、simmer(コトコト煮る)といった料理で使う動詞が登場します。

また、シチューの香りが街へ広がっていく場面では、scrumptious scent(ものすごくおいしそうな匂い)、waft(香りなどがふわりと漂う)といった、参考書ではなかなか出会わない表現も学べます。

さらに、女性警察官の on duty(勤務中)、ホットドッグ売りの vendor(販売員)など、日常生活や仕事に関係する英語も数多く登場します。

これまでに紹介した3冊がわりと重い内容なので、*Thank You, Omu!*の軽妙な物語は比較すると気軽に読めます。

警察官、店主、タクシー運転手、医師、弁護士、パン職人、バス運転手、建設作業員など、様々な職業の人たちが次々と登場する点も面白いです。日常生活と仕事に関する語彙が多いため、今回紹介している英語絵本の中でもTOEIC L&R試験との相性はかなり良いと考えています。

ただ、物語の中盤は「シチューの香りにつられて誰かが訪ねてくる → Omuがシチューを分ける」という展開が繰り返されます。英語を反復して覚えるには良いのですが、物語としてはやや単調です。その点から、英語教材としての評価は4つ星にしています。

参考画像: 様々な職業の人たちがおばあちゃんのOmuの家を訪問します。

評価: Thank You, Omu! / Oge Mora (著)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★★
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★★★
  • 英検との相性: ★★★☆☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★☆

Saturday(2019年)

Saturday / Oge Mora(著・イラスト)

2019年に出版された作品で、先ほど紹介した『Thank You, Omu!』と同じOge Moraによる絵本です。こちらも受賞作で、2020年のボストングローブ・ホーンブック賞(絵本部門)を受賞しています。

土曜日だけが特別な日。そんな母と娘の一日を描いた物語です。主人公のAvaのお母さんは、日曜日から金曜日まで週6日働いています。そのため、土曜日は親子が一緒に過ごせる、何よりも大切な一日です。

本書は現代の日常生活を舞台にしているため、英会話教材として非常に優秀です。そして、失敗や予想外の出来事が次々と起こるため、悲しいとき、がっかりしたとき、落ち込んだ相手を励ますときの英語表現をまとめて学べます。

失敗したときの落胆や悲しみを表す英語表現では、wail(大声で嘆く)、sob(すすり泣く)、boo-hoo(わあわあ泣く)、groan(うめく、嘆く)、crumple(がっくりと崩れ落ちる)などが登場します。

さらに、I’ve had it!(もううんざり!)、I messed up everything.(何もかも台無しにしてしまった)といった感情的な口語表現や、reassure(安心させる)、let out a deep breath(深く息を吐く)など、落ち込んだ気持ちを立て直したり、相手を安心させたり、励ましたりするときの表現も学べます。

また、絵本ならではの韻を踏んだ英文や、同じ表現を繰り返す構成も魅力です。 リズムよく音読でき、重要な英単語・英語表現を繰り返し学べるため、英語を記憶に定着させる教材としても優秀です。

評価: Saturday / Oge Mora(著・イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★★
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★★☆
  • 英検との相性: ★★★☆☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★☆

The Rough Patch (2018)

The Rough Patch / Brian Lies (著・イラスト)

キツネのEvanと愛犬の友情、突然の別れ、そしてそこから少しずつ立ち直っていく過程を描いた物語です。

Evanと愛犬はいつも一緒に過ごしていました。特に二人が好きだったのが庭仕事です。美しい庭を一緒に手入れし、植物を育てながら穏やかな生活を送っていました。

ところが、ある日突然、愛犬が亡くなります。

大切な存在を失ったEvanは家に閉じこもり、二人で育ててきた庭も壊してしまいます。しかし、荒れ果てた庭に一本のカボチャのつるが伸びてきたことをきっかけに、Evanは再び植物を育て始めます。

この作品は、同じく大切な動物との別れと新しい出会いを描いた Big Cat, Little Cat とテーマが似ています。ただし、英語教材として見ると、こちらの方が文章量が多く、登場する英単語や英語表現もかなり多様です。

特に面白いのが、庭や畑、植物を描写する英語表現がかなり豊富なことです。例えば、荒れた庭にカボチャのつるが入り込んでくる場面では以下の英文が登場します。

When Evan found a pumpkin vine sneaking in / under (の下からこっそり入り込んでいる) the fence, he raised (持ち上げた) his hoe /hoʊ/ (鍬) / to chop (たたき切る) it.

vine は植物の「つる」、hoe は畑を耕す「鍬」、chop は刃物などで「たたき切る」という意味です。英文法としても、found + O + Cの第5文型SVOCが使われています。

さらにEvanがカボチャを観察する場面では、以下のように植物の形や感触を具体的に描写する英語表現も登場します。

But then he considered its prickly stems (チクチクした茎) , fuzzy (細かく柔らかい毛で覆われた、ふわふわした) leaves, and spidery (クモの脚のように細く) , twisty tendrils /ˈten.drəlz/ (くねくねした巻きひげ) .

また、カボチャを育てる場面では、water が名詞の「水」ではなく、「植物に水をやる」という動詞として使われています。

そのため、これからワーキングホリデーへ行き、現地のファームで働く予定がある人には特におすすめしたい英語絵本です。

ワーキングホリデーのファームジョブでは、植物の茎、葉、つる、畑仕事など、日本で使っている英語教材ではあまり見かけない英単語に出会います。単語帳で覚えるよりも、Evanが実際にカボチャを育てているイラストを見ながら、prickly stems、fuzzy leaves、twisty tendrils とまとまりで読む方が、具体的なイメージと一緒に覚えられます。

英文法の面でも学べることが多く、第5文型SVOC、使役表現、分詞を使った表現、比較表現など、中学・高校で学ぶ英文法が実際の物語の中でどのように使われているのかを確認できます。

また、物語の後半では、Evanが育てた大きなカボチャを持って町のお祭りへ出かけます。

ここでは、農作物のコンテストや賞、食べ物を販売する屋台、多くの人が集まるイベントなどが描かれます。こうしたイベントやコンテストの場面はTOEIC L&R試験でもよく扱われるため、物語後半はTOEIC学習との相性も良いです。

そして、この作品で何より良いのは物語です。

愛犬を失ったEvanは、すぐに元気になるわけではありません。庭を壊し、家に閉じこもり、荒れた庭で植物を育て、町のお祭りへ出かける。その一つ一つを経て、少しずつ外の世界へ戻っていきます。

最後には、新しい子犬との出会いが待っています。

Big Cat, Little Cat も大切な動物との別れと新しい出会いを描いた素晴らしい作品ですが、英語教材として比較するなら、文章量が多く、多様な英単語・英語表現を学べる The Rough Patch の方をおすすめします。

特に、ワーキングホリデーでファームジョブをする予定がある人には、一度読んでおいてほしい一冊です。

評価: The Rough Patch / Brian Lies (著・イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★☆
  • TOEIC L&R試験との相性: ★★★★☆
  • 英検との相性: ★★★☆☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★☆

The Bad Seed(2017年)|「悪い種」が主人公のユーモアたっぷりの英語絵本

The Bad Seed: A Funny Story About Change and Second Chances for Children (Ages 4–8) (The Food Group)

「ぼくは悪い種(I’m a bad seed.)」と自分で堂々と言い切る、ヒマワリの種が主人公の英語絵本です。

普段の教科書で見かけない悪い行為の英語表現を一気に学べるのが、日本人学習者にとっては最大の魅力です。

参考: 本書に登場する教科書にはまず出てこない表現

  1. never put things back where they belong — 物を元の場所に戻さない
  2. lie about pointless stuff — どうでもいいことで嘘をつく
  3. cut in line — 列に割り込む
  4. finish everybody’s sentences — 人が話し終わる前に続きを言う
  5. show up late — 遅れて現れる、遅刻する

このほかにも日常英会話でそのまま使える表現が非常に多く登場するので、英会話の教材としてかなり使いやすい作品です。

また、YouTubeの朗読動画は973万回以上(2026年9月時点)再生されています。英語圏で広く読まれている人気作品なので、読んでおけば英会話の話題にもできます。

評価: The Bad Seed / Jory John(著), Pete Oswald(イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★☆
  • TOEIC L&R試験との相性: ★★★★☆
  • 英検との相性: ★★★☆☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★☆

The Day the Crayons Quit(2013年)|クレヨンたちが一斉に不満を訴える英語絵本

The Day The Crayons Quit

本作は英語圏では読み聞かせの定番となっている人気絵本です。ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーランキング1位となり、世界で数百万部を販売。読み聞かせに優れた児童書に贈られる賞(E.B. White Read-Aloud Award)も受賞しています。

本作の英語教材としての最大の魅力は、「疲れた」「もう我慢できない」「その話は勘弁してくれ」「少し休ませてくれ」といった、不満や感情を伝える日常英語をカラフルなクレヨン達と一緒に学べることです。

参考:本書に登場する、教科書では学べない表現

  1. wear myself out — くたくたになる、疲れ果てる
  2. I need a rest. — 休みたい、休ませてほしい
  3. completely lose it — 完全にキレる、我慢の限界になる
  4. give me a break — 休ませてくれ、勘弁してくれ
  5. Is that too much to ask? — それくらい頼んでもいいでしょう?

こうした表現は英会話では使うのに、学校の教科書や資格試験向けの参考書ではなかなかまとまって学べません。

クレヨンたちの愚痴を読みながら、実際に使える感情や不満の英会話表現を学べるのが本作の最大の魅力です。

また、絵本の文章が手書きなので、日本ではなかなか見る機会がない手書きの英文を読む練習になる点も良いなと思いました。

さらに、英語圏におけるそれぞれの色に対する認識を学べるのも面白いです。特に桃色(PEACH)に対する認識が日本とは違うのが興味深かったです。

なお、本作はYouTubeにも数多くの英語の読み聞かせ動画が公開されており、約479万回も再生されている人気作品です(2026年9月時点)。これだけ英語圏で広く読まれている作品なので、英語学習者が読んでおけば英会話の話題にもできます。

評価: The Day the Crayons Quit / Drew Daywalt(著), Oliver Jeffers(イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★☆
  • TOEIC L&R試験との相性: ★★★☆☆
  • 英検との相性: ★★★☆☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★★

Extra Yarn(2012年)|モノクロの町をカラフルな毛糸が彩る英語絵本

Extra Yarn: A Magical Story about how Kindness and Generosity can Transform a Community

帽子シリーズでおなじみのJon Klassenがイラストを担当した英語絵本です。彼らしい特徴のある動物たちも登場しますが、今回の主人公は可愛らしい少女Annabelleです。

参考画像: I Want My Hat Backに登場したクマとウサギも出てきています。

見どころは何といってもイラスト。雪の白と煙突から出るすすの黒で描かれたモノクロの町を、毛糸で編まれたセーターや帽子が少しずつカラフルに変えていきます。Jon Klassenの絵本の中では、私は本作のイラストが一番好きです。

物語は、Annabelleが色とりどりの毛糸が入った不思議な箱を見つけるところから始まります。その毛糸で自分や愛犬のセーターを編み、さらに町の人たちにも次々と編んでいくのですが、なぜか箱の中の毛糸はなくなりません。この不思議な箱をめぐって物語が動き始めます。

英文は易しめで、文章量も少ないので短時間で読めます。一方で、soot(すす)、yarn(毛糸)、chimney(煙突)、knit(編む)など、普通の英語教材ではあまり出会わない具体的な単語も学べます。

英文法では、特に turn out「結局〜だと分かる、実は〜だった」 が繰り返し登場するのが面白いです。

But it turned out / he was.

But it turned out / she could.

同じ表現を物語の中で何度も読むため、参考書の例文を単独で覚えるよりも意味と使い方が記憶に残ります。また、付帯状況を表す with + O + -ing など、高校英文法で学ぶ表現も自然に登場します。

英文は短くて読みやすい。イラストは見ているだけでも楽しい。それでいて、中学・高校で学んだ英文法や、普段の参考書では出会いにくい英単語も学べる。英語絵本の魅力がギュッとつまった本作なので、これから英語絵本を読む人に最初におすすめしたい一冊です。

評価: Extra Yarn / Mac Barnett(著), Jon Klassen(イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★★
  • TOEIC L&R試験との相性: ★★★☆☆
  • 英検との相性: ★★★☆☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★☆

2010年以前に出版された定番・名作の英語絵本

Madeline(げんきなマドレーヌ) (1939)

Madeline / Ludwig Bemelmans (著, イラスト) 

パリの古い寄宿学校に暮らす、いちばん勇敢で元気な女の子「マドレーヌ」の日常と騒動を描いた、世界中で愛され続ける古典的名作です。

盲腸で入院することになったマドレーヌの「傷跡」を、みんなが羨ましがるコミカルな展開など、子どもらしい愛らしさとユーモアがたっぷり詰まっています。

全てのページが心地よい「韻(ライム)」を踏んだリズムのある英語で書かれており、声に出して読む楽しさを味わいたい方におすすめです。

12人の女の子たちの規則正しい集団生活や、パリの街並み、病院でのやり取りなどが舞台となるため、日常英会話の教材として、TOEIC LR試験の教材としても使えます。

教材として使用するには英文の量がやや物足りないです。本当は星4つの評価が妥当です。

でも、それを補って余りある以下の魅力的な朗読動画があるせいで、気がつけば何度も何度も聞いてしまいます。一番繰り返し聴いている朗読動画です。

シリーズで共通している始まりの文章。何度も聴いている内にすっかりと覚えました。

In an old house in Paris
that was covered with vines
lived twelve little girls in two straight lines.

評価: Madeline / Ludwig Bemelmans (著, イラスト) 

  • 英文の読みやすさ: ★★★★★
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★★☆
  • 英検との相性: ★★☆☆☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★★

The Little House(ちいさいおうち)(1942年)

The Little House / Virginia Lee Burton(著・イラスト)

田舎の丘の上に建つ、小さなおうちが主人公の物語です。

物語の前半では、昼と夜、春夏秋冬の移り変わりとともに、美しい自然に囲まれた農村の暮らしが描かれます。しかし後半になると、農村の都市化が急速に進み、小さなおうちの周囲には道路や住宅、高層ビルが次々と建設されていきます。

そして、何より驚くのが本書が1942年に出版されていることです(翌1943年にはコルデコット・メダルを受賞)。

80年以上にわたって読み継がれてきた、美しい英文とイラスト。まさに時の試練を乗り越えて生き残った名作です。日本の図書館にも翻訳書の在庫が多くあるので、この表紙を見かけたことがある方も多いことでしょう。

横浜市の図書館で撮影。翻訳された「ちいさいおうち」

その一方で、日本人の目線からすると、太平洋戦争の真っ最中に、こんなカラフルで美しい絵本を出版する余裕がアメリカにはあったのかという驚きもあります。「ほしがりません、勝つまでは」と困窮していた日本との大きな差を実感しました。

そして、TOEIC L&R試験対策との相性では、都市開発、建物、交通機関に関する英単語が数多く登場します。

例えば、道路工事の場面では、surveyors(測量士)、steam shovel(蒸気ショベル)、steam roller(蒸気ローラー)などが登場します。都市化が進む場面では、apartment houses(集合住宅)、tenement houses(賃貸集合住宅)、elevated train(高架鉄道)、subway(地下鉄)なども学べます。

一方で、1942年の作品なので、英語表現には時代を感じる部分もあります。例えば、助動詞の shall が登場するのを見て、「やはり古い英語だな」と思いました。 現代でも shall は使われますが、日常英語では will を使う場面が多く、こうした表現の違いからも出版された時代を感じられます。

80年以上読まれ続けている絵本は、英語の読解力を鍛えられる一冊でもあるのでお勧めです。

評価: The Little House / Virginia Lee Burton(著・イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★☆
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★★☆
  • 英検との相性: ★★★☆☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★★

Frog and Toad Are Friends(ふたりはともだち)(1970年)

Frog and Toad Are Friends / Arnold Lobel(著・イラスト)

仲良しのカエルのFrogとToadを主人公にした、5つの短編からなる物語です。1971年にはコルデコット・オナーに選ばれています。

本書は絵本というよりも、きわめて易しい英語で書かれた児童文学です。 英語の原書を初めて読む人の最初の一冊として選ばれることが多く、長年にわたって学校の英語授業でもサブリーダーとして使われてきました。実際に読んでみると、それも納得です。

何より面白いのが、FrogとToadの会話の掛け合いです。前向きで行動的なFrogと、少し頑固で不器用なToad。性格が全然違う2匹のやり取りが面白く、大人が読んでも楽しめます。

英語教材としても非常に優秀です。絵本としては文章量が多く、中学英文法を学び終えた人が、まとまった英文を読む練習をするのに向いています。

例えば、春の話では、run up the path(小道を走っていく)、pull the covers over his head(掛け布団を頭までかぶる)、push someone out of bed(人をベッドから押し出す)といった表現が登場します。

また、水泳の話では、bathing suit(水着)、swim over to(~のところまで泳いでいく)、climb out of the river(川からよじ登って出る)、drip(水が滴る)なども学べます。

登場するのは実際の日常英会話では知っておきたい英語ばかりです。 特に、動作を表す動詞と前置詞を組み合わせた表現を、物語の場面と一緒に学べる点を高く評価しています。

1970年の作品ですが、日常生活を描いた英語は今でも十分に使えるものばかりです。50年以上読み継がれている理由がよく分かる、物語としても英語教材としてもおすすめしたい一冊です。

評価: Frog and Toad Are Friends / Arnold Lobel(著・イラスト)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★★
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★☆☆
  • 英検との相性: ★★★☆☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★★

文章が短くて読みやすい現代の英語絵本

ここからは、文章量が少なく、短時間で読み終えられる英語絵本の中からおすすめの作品を紹介します。

これまで紹介してきた作品と比べると英文そのものがかなり少ないため、このカテゴリーでは「英語教材としての適正」を最大★★★で評価します。

文章量が少ないため、洋書を一冊読み切った経験がない人でも挑戦しやすい作品ばかりです。ただし、文章が短くても、難しい英単語や文学的な表現が登場する作品はあります。

Hot Dog (2022)

Hot Dog / Doug Salati (著・イラスト) (Winner of the 2023 Caldecott Medal)

ニューヨークの暑い夏の日を舞台に、飼い主と散歩をしていた一匹のダックスフンドが、都会の暑さや騒音、人混みにうんざりしてしまうところから始まる物語です。

暑い歩道、車のクラクション、工事の音、せわしなく行き交う人々。ついに我慢できなくなったHot Dogの様子に気づいた飼い主は、そのまま予定を変更して、Hot Dogを海へ連れて行きます。

都会を離れて海に到着すると、物語の雰囲気は一変します。Hot Dogは砂浜を走り回ったり、波と遊んだり、海辺の生き物を眺めたりしながら、のびのびとした時間を過ごします。

大きな事件が起こる作品ではありませんが、「疲れたときにはいつもの環境から離れて休むことも大切」というメッセージが伝わってきます。都会での息苦しさと海辺での解放感をイラストで対比している点も、この作品の大きな魅力です。

私自身、昔ニューヨークに住んでいたことがあるので、イラストを見ていると当時のことを思い出しました。特に夜の公園を描いたイラストが好きです。

2023年には、アメリカの優れた絵本に贈られるコルデコット・メダル(Caldecott Medal)を受賞しています。オナーではなく、その年のMedal受賞作品です。

英文は短く、イラストから状況を推測しやすいため、今回紹介する英語絵本の中でもかなり読みやすい作品です。

その一方で、英語学習の教材としてはあまりおすすめできません。まとまった英文が続くのではなく、以下のように短く断片的な英語表現が並んでいるためです。

City summer
steamy sidewalks(蒸気でむせ返るような歩道)
concrete crumbles(コンクリートが崩れる)
sirens screech /skriːtʃ/(サイレンなどがキーキーと耳障りな音を立てる)
so hot!

英文そのものの量もかなり少ないので、英語をたくさん読むための多読教材には向いていません。また、一つのまとまった英文を読んで英文法や構文を学ぶ教材としても使いにくいです。

その一方で、steamy sidewalks、sirens screechのように、短い英語表現とイラストが強く結びついているため、英単語や表現をイメージと一緒に覚える教材としては使えます。

ただ、英語教材として評価すると★1つです。英文があまりにも少なく、しかも断片的だからです。

それでも私はこの絵本が大好きです。特にイラストが素晴らしい。さすが、その年の最優秀作品に贈られるコルデコット・メダルを受賞した作品です。

暑くて騒がしいニューヨークの街と、開放的な海辺の対比がとても綺麗に描かれています。

この海辺について調べてみると、作者のDoug Salatiが『Hot Dog』の着想を得たのは、ニューヨーク州ロングアイランド沖にあるFire Island(ファイア・アイランド)でした。2012年に友人を訪ねてFire Islandへ行った際、そこで楽しそうに過ごしていた犬Charlieと出会ったことが、この物語の原点になっています。

これからニューヨークへ行く方は、『Hot Dog』の舞台を感じられる場所として、Fire Islandも訪問先の候補にしてみてください。

英語を勉強するためというよりも、10分ほど英語とイラストを楽しむために読む絵本としておすすめします。

評価: Hot Dog / Doug Salati (著・イラスト)

  • 英語教材としての適正: ★☆☆

Big Cat, Little Cat (2017)

Big Cat, Little Cat: (Caldecott Honor Book) (English Edition)

一匹の大きな白い猫が暮らしている家に、小さな黒い猫がやってくるところから始まる物語です。

先輩である白い猫は、新しくやってきた黒い猫に、家でどのように暮らせばよいのかを一つずつ教えていきます。何をするのか、いつ食べるのか、どこへ行くのか、どのように過ごすのか。やがて月日が流れ、小さかった黒い猫も大きくなっていきます。

この絵本は文章量がかなり少ないだけでなく、英文そのものがとても易しいです。中学3年生までに学ぶ英文法を理解していれば、ほとんどの英文を読むことができます。

英語教材として特におすすめしたいのが、疑問詞+to不定詞の練習にとても良いことです。

例えば、先輩の猫が新しくやってきた猫に暮らし方を教える場面では、

what to do
when to eat
when to drink
where to go
how to be
when to rest

といった表現が次々と登場します。

疑問詞 + to不定詞は中学英文法で学ぶ重要な文法項目です。what to do(何をすればよいか)、where to go(どこへ行けばよいか)、how to be(どうあればよいか)のように、疑問詞を変えながら同じ文法を繰り返し読むことができます。

さらに、

The cat showed the new cat what to do.

という英文では、show + 人 + 疑問詞+to不定詞という形で、実際の文章の中でこの文法がどのように使われるのかを学べます。

英文法参考書で what to do / where to go / how to use などをバラバラに暗記するよりも、先輩の猫が新しい猫に暮らし方を教えているイラストと一緒に読む方が、意味を理解しやすく記憶にも残ります。

そして、この絵本は英文が易しいだけではありません。物語も非常によくできています。

やがて年老いた白い猫がいなくなり、残された黒い猫は一匹になります。しかし、しばらくすると家に新しい小さな猫がやってきます。

今度は、かつて教えてもらう側だった黒い猫が、新しくやってきた猫に暮らし方を教えます。

物語の最初と最後で同じような場面が繰り返され、教えてもらった猫が、次の世代の猫に同じことを教える側になるという循環が描かれています。

文章は非常に短く、使われている英文法も易しい。それでも、出会い、成長、別れ、そして新しい出会いまでが一冊の中できれいに描かれています。

中学英文法を学び直している人が、参考書で覚えた英文法を実際の物語の中で確認するための英語絵本として、特におすすめしたい一冊です。

評価: Big Cat, Little Cat / Elisha Cooper (著・イラスト)

  • 英語教材としての適正: ★★★

I WANT MY HAT BACK (2011)

I WANT MY HAT BACK / Jon Klassen (著・イラスト)

大切な帽子をなくしたクマが、森の動物たちに「僕の帽子を見なかった?」と一匹ずつ尋ねながら探し回る物語です。

2011年に出版され、世界で100万部以上売れている人気作品です。

日本では2019年にユニクロとのコラボ商品も発売され、『I WANT MY HAT BACK』のクマをデザインしたTシャツやパジャマが販売されました。この表紙のクマに見覚えがある人もいるでしょう。

文章量はかなり少なく、使われている英文もかなり易しめです。そのため、英語絵本を読み始めたばかりの人でも読みやすい作品です。

特に英語教材としておすすめしたいのが、現在完了形を使ったやり取りが繰り返し登場することです。

Have you seen my hat?

No. I haven’t seen your hat.

帽子を探しているクマが森の動物たちに次々と同じ質問をするため、Have you seen …? / I haven’t seen … という現在完了形の基本的な形を、物語を読みながら何度も繰り返すことができます。

英文法参考書で現在完了形の例文をバラバラに覚えるのではなく、「なくした帽子を探している」という一つの状況の中で同じ表現を何度も読むことができます。

現在完了形を学んだばかりの人が、実際の会話の中で現在完了形がどのように使われるのかを確認する練習に最適な英語絵本です。

また、want it back(それを返してほしい)、Thank you anyway.(とにかくありがとう)、any hats / anywhere / anything など、日常英会話で使える基本的な表現も登場します。

物語の後半になると、現在完了形だけでなく、Would you like me to …?、What if …?、never … again など、少し難しい表現も出てきます。

そして、この作品の一番面白いところは物語です。帽子を探していたクマは、途中で出会った動物たちとの会話を思い返しているうちに、ある重要なことに気づきます。そこから物語は一気に展開します。

子ども向けの可愛らしい絵本だと思って読んでいると、最後にはかなりブラックな結末が待っています。短くて英文も易しいですが、大人が読んでも十分に楽しめる作品です。

英語学習の教材として見ると、特に現在完了形を学んでいる初級者におすすめです。現在完了形を参考書で理解したあと、実際の物語の中で繰り返し確認する教材として非常に使いやすい一冊です。

評価: I WANT MY HAT BACK / Jon Klassen (著・イラスト)

  • 英語教材としての適正: ★★★

Someday (2007)

Someday / Alison McGhee (著), Peter H. Reynolds (イラスト)

母親が娘の成長と、その先にある長い人生を想像しながら語りかける物語です。

赤ちゃんだった娘が成長し、一人で歩くようになり、やがて母親のもとを離れていく。そして、その娘にもいつか子どもが生まれ、最後には年老いていく。母親が「いつか(Someday)」訪れる娘の未来を想像しながら、物語が進んでいきます。

文章量はかなり少なく、短時間で読み終えられる絵本です。一方で、内容はかなり抽象的です。子どもの成長、親子の別れ、老いといった長い時間の流れを、少ない言葉とイラストで表現しています。

英語教材として特に面白いのが、文章量が少ないにもかかわらず、第5文型SVOCの知覚表現が登場することです。

例えば、雪が赤ちゃんの肌の上で溶けていくのを母親が見つめる場面では、

I watched them melt on your baby skin.

という英文が登場します。watch + O + 動詞の原形で「Oが〜するのを見る」という第5文型SVOCです。

この作品では、母親が娘の成長を見守るという物語そのものと、watch + O + Cという知覚表現が非常によく合っています。英文法の参考書でSVOCの形だけを覚えるよりも、母親が娘を見守っているイラストと一緒に読むことで、知覚表現がどのような場面で使われるのかを理解しやすいです。

もう一つ、この絵本を英語教材としておすすめしたい理由が助動詞 will の多さです。

タイトルの Someday が示す通り、この物語では母親が娘の「これから先の人生」を想像します。そのため、

Someday … will …

という未来を表す英文が繰り返し登場します。

「未来だから will」と英文法参考書で覚えるのではなく、まだ起きていない娘の未来を母親が思い描いている場面で will が使われているため、助動詞 will の感覚を物語の中でつかむ練習になります。

文章量だけを見れば非常に短い絵本ですが、第5文型SVOCの知覚表現を学べることに加えて、助動詞 will が繰り返し登場するため、英文法の教材としてかなり使いやすい作品です。

また、英文そのものも非常に美しいです。娘がこれから経験する喜びだけでなく、悲しみ、孤独、老いまで描いています。

内容はやや抽象的なので、小さな子どもが物語をそのまま理解するには難しい部分もあると思います。しかし、大人が読むと、親が子どもの人生を見守るという物語の意味がよく分かります。

文章は短い。でも、英語教材として学べることはかなり多い。そして何より、物語としてとても良い。

短時間で読める英語絵本の中では、特におすすめしたい一冊です。

評価: Someday / Alison McGhee (著), Peter H. Reynolds (イラスト)

  • 英語教材としての適正: ★★★

Don’t Let the Pigeon Drive the Bus!(2003年)

Don’t Let the Pigeon Drive the Bus! / Mo Willems(著・イラスト)

バスの運転手が少しの間バスを離れることになり、読者に「ハトにバスを運転させないで」と頼むところから始まる物語です。2004年のコルデコット・オナー受賞作です。

いろいろな言葉でお願いしてくるハトに、読者が「NO!」と断り続けるという、読者参加型のユーモアあふれる作品です。

英語教材としての最大の魅力は、短い文章の中に、日常英会話で使えるお願い・交渉・不満などの口語表現が大量に登場することです。

例えば、次のような表現が登場します。

  • I tell you what. — じゃあ、こうしよう
  • I never get to do anything! — 僕は何にもやらせてもらえない!
  • C’mon! — ねえ、お願い!
  • No fair! — ずるい!
  • What’s the big deal!? — 何がそんなに問題なの?

教科書ではなかなかまとめて学べない、お願いする、交渉する、不満を言う、怒るといった感情表現が次々と登場します。

文章量は少なく、イラストもシンプル。それでも、英会話で使える表現の豊富さは、今回紹介する短い英語絵本の中でもトップクラスです。 特に、学校の英文法は一通り学んだけれど、日常英会話で使うくだけた表現をあまり知らない人におすすめしたい一冊です。

評価: Don’t Let the Pigeon Drive the Bus! / Mo Willems(著・イラスト)

– 英語教材としての適正: ★★★

シリア内戦を描いた英語絵本

ここから紹介する2冊は、どちらもシリア内戦を背景にした実話をもとにした英語絵本です。

戦争、避難、貧困といった重いテーマを扱っており、これまで紹介した英語絵本とは少し性格が異なるため、独立して紹介します。

英語を学ぶだけでなく、シリア内戦の中で実際に暮らしていた人々の生活を知るきっかけになる2冊です。

The Cat Man of Aleppo (2020)

The Cat Man of Aleppo / Irene Latham, Karim Shamsi-Basha (著), Yuko Shimizu (イラスト)

シリア内戦下のアレッポを舞台に、街に取り残された猫たちを救った実在の人物 Mohammad Alaa Aljaleel の活動を描いた物語です。

主人公のAlaaは救急車の運転手として負傷した人々を助ける一方、住民が避難した街に残された猫たちに餌を与えるようになります。やがてその活動に賛同する人々から支援が集まり、猫たちのための保護施設を作るまでになります。

参考画像: 猫がたくさん登場します。

戦争を扱っているため重い背景を持つ作品ですが、物語の中心にあるのは戦争の悲惨さそのものではなく、「困難な状況でも、自分にできることをする」「人や動物を思いやる」という前向きなメッセージです。

実話をもとにしているため、英語を学びながらシリア内戦や中東について知るきっかけにもなります。2021年には、アメリカの優れた絵本に贈られるコルデコット・オナー(Caldecott Honor)にも選ばれています。

英文は絵本としてはやや難しく、物語前半では戦争や救援活動に関する語彙も多く登場します。一方、物語後半には寄付やボランティア、海外からの支援についての表現も登場します。こうした語彙や表現はTOEIC LR試験でも役立つため、TOEIC学習者の多読教材としても使いやすいです。

参考英文:物語中盤、世界中から支援が集まり始める場面
Word spreads, and volunteers arrive. Donations pour in from many different countries. Everyone wants to help the cats of Aleppo.

また、英検では社会問題や国際問題を扱う長文が出題されます。本書には戦争や支援活動に関する語彙も多く登場するため、英検2級〜準1級を目指す学習者の多読教材としてもおすすめできます。

難点を挙げるとすると、戦争の描写が重苦しいため、気分が落ち込んでいる時には、物語の前半を読み進めるのが少ししんどく感じるかもしれません。この点から、英語教材としての適正を4つ星にしました。

評価: The Cat Man of Aleppo / Irene Latham, Karim Shamsi-Basha (著)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★☆
  • TOEIC LR試験との相性: ★★★★☆
  • 英検との相性: ★★★★☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★☆

Nour’s Secret Library (2022)

Nour’s Secret Library

Nour’s Secret Library / Wafa’ Tarnowska (著), Vali Mintzi (イラスト)

シリア内戦下のダマスカスを舞台に、戦争によって日常生活を奪われた少女NourといとこのAmirたちが、本を集めて秘密の図書館を作っていく物語です。

本作のイラストは戦争を題材にしながらも子どもの目線で描かれているためか可愛らしく、物語の前半ではダマスカスの街並みも魅力的に描かれています。

参考英文:内戦前のダマスカスを「香り高い場所」と表現する場面
There was a girl named Nour who lived in the city of Damascus, which was described by those who loved it as the “fragrant place”

爆撃によって学校に通えなくなったNourたちは、地下室に避難して生活するようになります。そんな中、壊れた建物から本を集め始め、やがて地下に秘密の図書館を作ります。そこには子どもだけでなく大人たちも集まり、本を読んだり、学んだりするようになります。

戦争を扱った重い作品ですが、物語の中心にあるのは戦争の悲惨さだけではありません。「どのような状況でも学ぶことを諦めない」「本や物語には人々をつなぐ力がある」というメッセージが込められています。

実話や作者自身の経験をもとにした作品で、英語を学びながらシリア内戦や、戦争の中でも本を守ろうとした人々について知るきっかけにもなります。

2022年には、独立系出版物を対象とした出版賞で、児童絵本部門の金賞を受賞しています。

英文は一般的な子ども向けの英語絵本と比べるとやや難しく、戦争や避難生活に関する語彙も登場します。一方で、学校に行く、本を読む、本を集める、友人や家族と話すといった身近な行動も多く描かれているため、イラストを手がかりに物語を読み進めることができます。

日常生活を描いた場面もありますが、戦争や避難生活が物語全体の背景となっているため、TOEIC LR試験との直接的な相性はそれほど高くありません。

一方、英検では教育、戦争、社会問題、国際問題などを扱う長文が出題されます。本書ではそうしたテーマに関連する英語を物語の中で学べるため、英検2級〜準1級を目指す学習者の多読教材としておすすめできます。

評価: Nour’s Secret Library / Wafa’ Tarnowska (著)

  • 英文の読みやすさ: ★★★★☆
  • TOEIC LR試験との相性: ★★☆☆☆
  • 英検との相性: ★★★★☆
  • 英語教材としての適正: ★★★★☆

まとめ:大人の英語学習にも英語絵本はおすすめ

私は仕事で高校・大学入試対策のための英文法参考書の英文、無味乾燥なTOEIC LR試験対策な英文に長時間触れています。

これら教材の英文と比べると、英語絵本は読んでいて楽しく、適度な息抜きになります。

今回紹介した英語絵本を実際に読んでみると、学校の教科書や資格試験の参考書ではなかなか出会わない英単語や英会話表現を、物語やイラストと一緒に学べることが分かります。

英文法についても、参考書で学んだ文法が実際の英文でどのように使われているのかを確認できます。

英語絵本は「英語を勉強する」という感覚よりも、「英語で読書を楽しむ」という感覚で楽しめます。

なんといってもイラストが綺麗な作品ばかりなので、英語絵本は見ているだけで楽しいです。

英語学習を”義務” “修行” “苦行”だと考える人にこそ英語絵本はお勧めです。

そして、英語絵本を楽しみながら英語に触れる時間を増やすことで、英語力の土台を少しずつ育てていくことができます。

英語絵本、子どもだけでなく、大人にもお勧めです。

英語絵本を「読むだけ」で終わらせたくない方へ

英語絵本は、英文を読んで終わりではなく、精読 → リスニング・音読 → 英作文 → 英会話まで取り組むことで、読む・聴く・書く・話すの4技能を学ぶ教材として活用できます。

この記事を書いている柴田 @HAL_Jは、オンライン英語学習塾「ハルヨン」とフィリピン留学の「バックワイズ」で、英語学習カリキュラムの設計を統括し、実際に英語教師としてレッスンも担当しています。

ハルヨンとバックワイズでは、資格試験の点数を取るだけで終わらず、その先で実際に英語を使えるようになることを目指しています。この記事で紹介した英語絵本も、英文読解・リスニング・音読・英作文・英会話まで発展させる教材として活用できます。

日本で英語の基礎を身につけ、フィリピン留学では英会話を徹底的に実践する。

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この記事を書いた人

Backwise共同代表(塾長)・学習カリキュラム担当。
「20歳を過ぎてから英語を学ぼうと決めた人たちへ」の著者。自らも英文法・発音のレッスンを日々提供しています。
フィリピン留学の世界に2012年から関わっています。

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